一番初めに、2009年に初めて1分の1(実物大ガンダム)を見せてもらった時に一番驚いたことは、 実を言いますと、大きいからではなかったんです。おもちゃカラーというものがどんなに素晴らしいかということを実感させられました。
さらに、大仏的であるということ、これはアイドル的な1つのインパクトがある。そういう意味で、存在として意義がある。1分の1を動かしてみせるということについては、これ以後の、あらゆる意味でのマイルストーンになるのだと思っています。
35年前にアニメとしてガンダムを制作した時のことで言えば、当然絵空事でしたから好き勝手にやっていました。ただ、好き勝手にやっている、つまり、無節操にやることができたからこそ、夢の夢たるゆえんがあったのではないかと思っています。
僕自身、鉄腕アトムの制作でアニメの世界に入ってきた。鉄腕アトムというのはガンダム以上に高性能なものです。それが、現在ただ今までも、1つの工学者の目標として、憧れとして語られている固有名詞になっているということを考えれば、こういう夢というものを次世代に伝えていく必要があるのではないか。
それが、40年、50年という時間を過ぎれば、こういう(ガンダムを動かすという)形になっていく。ガンダムというもので新しいスタイルを生み出してくれるのではないかと思っています。
これまで科学技術というのは、どちらかというと産業を中心に、効率とか、ロジカルな物事の捉え方でやってきましたが、人間を相手にすると、感性的、心理の問題が重要になってきた。人間ができないことをするのではなくて、人間が当たり前にできることを、どうやって機械にやらせるか、そういう方向の新しい技術が出てきた。まさに、効率から居心地を基準に取るようなロボット技術が発展してきて、サービスロボットの中に埋め込まれている時代です。
ところが、この中で忘れていたものを3.11で我々は思い返した。頑健性とか、物理の問題としてのロボットをもう一度考える必要があるのではないか。効率、感性、頑健、この3つを全部備えるのが本来であろうと。 これを1つのモデルとして、ガンダムというものの中で、この3つの方向に対する我々のいうものの思いをまとめあげることができないか。これが、この5年で我々がやりたいことです。今、世界でいろんな問題が起きていますけれども、世界中の人の思いを集めてこれができるんだ、ということを日本で示したい。
ガンダムを作るということに関して、まさに夢であったものに対して解があるんだということを申し上げたい。ただ、それが1つかどうかは保証されない。あるいは複数の解があるかもしれない。それに向かって世界中の思いがオープンイノベーションのなかでまとまってくることを、期待したいと思っています。それをやることによって、夢が現実になる。その現実がまた新しい夢を作る。そういうサイクルを作っていくことが、このチャレンジで我々が目指していくことだと思います。
日ごろから、全世界の大学、特に技術系の大学は、夢をいかに実現するかということを教えてきた。その夢にだんだん現実が近づいてきています。ところが、このギャップが少なすぎるという気がするんですね。もっと広げないと元気が出ないということがあります。
そういう意味で、これからの100年は、全世界の大学がいかに次の夢を見るかということを教えなくちゃいけない。あるいは、共に考えていかなくちゃいけない。
ガンダム GLOBAL CALLENGEがその1つのモデルとなって、これをやり遂げたあとに、さらにでかい夢を見られる。そういう導入になればいいと、大変エキサイティングな気持ちになっています。
このプロジェクトには、本当に動くかというのと、動いて何するのという、その2つの側面があると思うんですよね。それで、エンターテインメントという言葉を使っているんですけれども、動くことによって、何か人が感動したり、何かを考えることができれば、僕はそれでいいのかなと。
ガンダムが動くことによって何かの目的を果たすとすれば、人に与える感動を追求していきたいと思っています。
30周年を迎える前、何をやろうかなって考えていたんですね。突然、18メートルのガンダムが立ってたら、きっと面白いだろうな。その一言しか、僕、思い浮かばなかったんですね。 正直申し上げて、社会に及ぼすインパクトとか、そういうのを全く考えないで、立ったら面白いだろうなっていうだけで会社を説得して、立てさせていただいたんですけれども。動くというのは全く考えていなかったんです。スタッフが、頭がちょっと動くということを教えてくれてなくて、僕は現場で初めて頭が上を向いた時に非常に感動したんですね。頭が動くだけで1つのものが変わっていくんだということを、そこで体験したので、できればいつかは動かしてみたいという思いは、18メートルのガンダムができた時からありましたね。
オリンピックの前年ですので、当然日本にたくさんのお客さんがいらっしゃったり、日本が話題になったりする。そこで世界の人たちと一緒に作ったものがありますよということだけは、アピールさせていただきたいなと思っています。肝心なのは、世界の人たちと考えて、日本が作ったというところ。ここにフォーカスしたいと思います。
※2014年7月9日(水)記者発表会、及びパネルディスカッションより一部抜粋